今野 緒雪 『お釈迦様もみてる〜紅か白か〜』

福沢祐巳の弟の福沢祐麒が主人公やってる。まぁ、『マリア様がみてる』のスピンオフ作品であり、『涼風さつさつ』のあたりでどちらかというと(男なんかいらないんだよ!的意味で)悪目立ちしていた花寺学院高校(男子校)のお話。冗談みたいなタイトルだが、冗談じゃないんだ。彼らのキャラクターはファンタジー扱いのリリアンの薔薇様がたよりもある意味立っている。それはもう……何だ、オカマとかゲイとかそんなレベルじゃなく漫画的な、そうだな山百合会のメンバーの中に外人娘やら関西弁を話す奴やら飛び級で入学した小学生みたいなキャラがいるような立ちっぷりなんだ。リアルな男子校? いやいや、どの口がそんなこといいますか。最初から、そんなものは、ねぇ。

しかし男子校でイカすシステムは姫制度ぐらいしか知りませんでしたが、こちらでも源平の派閥分けといい、烏帽子親といい、面白いシステムが存在しており楽しめる。源平なんか学園祭の時はただの紅白みたいなものかと思っていたが、実生活でも影響があり、なかなかどうしてえげつない。確かに女子が書く男子校ノリだけど、学園内に勢力図があり、それを仕切る生徒会といい、昔の学園抗争まんがみたいで楽しく……なりませんかね? 男塾の一号生と二号生が争ったみたいにさー、文化系と運動系で部費をめぐって争ったら『あすか120%』みたいで本当に漫画かゲームだな。何故だかマリア様と違い、こちらは争い要素に満ちてて(貞操も含め)危険と隣りあわせだよ?

みんな仲良くとはほど遠い、そんな荒んだ学園(誇張アリ)で無所属の主人公が生徒会長という、ある意味「神」に気にいられたり、勝負を挑まれると下手なえろげの主人公みたいに野郎から野郎を救ったり、昔語りをしたりと各地でイベントを起こしてフラグを立て、仲間を集めて立ち向かっていったりと、あれー?これって熱い友情モノとしていけんじゃね? 円卓の騎士か桃園の誓いか、(自称)平凡な野郎が学園で権力を掴んでいくピカレスクロマン(嘘)それがお釈迦様もみてる……釈迦っていいのよ。

読んでいて、作者がノリノリというか楽しそうに書いているので、正直最近のマリみてより楽しめた。
野郎の描写は微妙に気持ち悪くて最高だ。ここには女はいらねぇーんだよぉ! 生徒会長に心酔してるアンドレ先輩がツンデレ通り越して気持ち悪すぎる……だがそれがいい。昔の眼鏡君を見ているようだ。『愛と誠』でいうなら岩清水。君のためなら死ねる。

マリア様がみてる』の過去話の側面もあるので、読んでてニヤリとするエピソードもあり。つまり、未来を知りたければマリア様を読めばいい。とりあえず、志摩子パパが花寺にやってきた話とマリア様無印(1巻)のこっそり劇を見に来ていた話はやってくれると信じている。続くでしょ? この話。

まぁ、なんだ。普通に楽しめるので百合とか違うとか毛嫌いせずに読めばいい。
願わくは、こちらで見せた「色気」をマリア様でも見せてくれないかと。こちらは軽くとはいえ、キスとかするんだぜ? 相手が相手とはいえどうなんだ。